“英検1級”と聞くと、『英語を極めた』、『英語の栄冠を手にした』と言っても過言ではない、超難関試験のイメージですよね。
英検は、文部科学省後援、2021年累計受験者数1億人超えの、日本ではTOEICと並んで認知度の高い英語資格試験です。
英検1級合格者というと、英語の分野にいない人にも、英語に精通している人の間でも『別格』『桁違いの難しさ』『化け物レベル』と言われるくらいです。
そんな英検1級が一目置かれるのはどうしてなのか、その“すごさ”について5つの観点から見ていきたいと思います。
英検1級ってどんな試験内容?
英語資格試験の中でも最難関と言われる英検1級の試験内容は、どんな構成になっているのでしょうか?
学生の頃に学校で受験した人、英検準1級を受けたことがある人ならある程度想像がつくかもしれませんね。
1次試験はとにかくすごい量と質の内容。
筆記が100分の制限時間で、ライティングも含め4つのパートに分かれており、41問あります。
リスニングは、4つのパートに分かれており27問あります。
2次試験では2分間のスピーチと質疑応答です。
カギは英語の知識のみでなく、相手に伝える発信力と対応力。
そして世界で活躍できる人材の英語力を証明するレベルのスピーキング力です。
1次試験と2次試験の概要
100分の中にかなりのボリュームの問題が詰め込まれています。
扱われる題材は以下のように様々なジャンルに渡ります。
2次試験詳細
2次試験は、面接委員2人(日本人とネイティブ各1人)との個人面接で、約10分です。
自由会話の後、与えられた5つのトピックから1つ選び、スピーチを2分間行い、スピーチの内容についてのQ&Aがあります。
1次試験の英作文と同じように、最初に結論を述べ、3つの理由とその補足説明or具体例を述べ、最後に再度結論を言います。
Q&Aでは自分の主張に矛盾がないよう論理的に答える必要があります。
英検1級のすごさってどれくらい?4つの視点から検証
英検1級のすごさはどれくらいなのか、4つの視点から検証します。
合格率
超難関と言われる英検1級の合格率はどれくらいなのでしょうか?
2015年度は12%でした。
準1級は15%前後、2級は25%前後、準2級は35%前後、3級は50%強、4級は70%強、5級は80%強の合格率であることを考えると、いかに英検1級の合格率が低いかがわかります。
受験者10人中8~9人は不合格になっているということですね。
英検1級の2次試験のみの合格率は、2012年以降非公開になっていますが、2007年から2011年までは56~61%くらいでした。
1次試験の合格率は2016年以降非公開になりましたが、過去と比較して合格率を大幅に変更することは、(問題の難易度が変わらないという前提のもと)過去の試験の合格者と現在の試験の合格者のレベルを変えてしまうことになり得るため、過去の傾向から大きな変更はないと思われます。
合格ライン(合格点)
次に、英検1級の合格点はどれくらいなのか見ていきます。
英検の合格点は4技能の合計得点で判断するのではなく、技能ごとにスコアを均等に配分しています。
“スコアは各回の全答案採点後、統計的手法(Item Response Theory*)を用いてスコアを算出しているため、受験者が自身の正答数でスコアを算出することはできません。
*Item Response Theory
テストにおける受験者の応答パターンを用いて、形式や難易度が異なるテストの結果を比較するための理論“
英語検定協会
合格率が公開されなくなった2016年からは、合否判定だけでなくCSEスコア(Common Scale for English)も記載されるようになりました。
CSEスコアとは、問題の難しさ、受験者全体のできにより毎回変動する偏差値のようなものです。(CSEスコア)
英検1級は、2,550点満点で約7割以上2,028点取れば合格です。
2,028点をリーディング、ライティング、リスニングの3で割ったら676なので、各676点以上取れれば合格です。
2次試験も850点満点中7割以上の602点以上が合格ラインです。
ちなみに、2005~2015年度のCSEスコアは成績表に記載されていませんが、当時の英検のスコアがわかれば、該当するCSEスコアを英検協会に問い合わせをすることができます。
【1次試験 合格スコア】
級 | 合格点(得点率) | 満点 |
---|---|---|
1級 | 2,028(約79.5%) | 2,550 |
準1級 | 1,792(約79.6%) | 2,250 |
2級 | 1,520(約78%) | 1,950 |
準2級 | 878(約73%) | 1,200 |
3級 | 746(約68%) | 1,100 |
4級 | 622(約62%) | 1,000 |
5級 | 419(約50%) | 850 |
【2次試験 合格スコア】
級 | 合格点(得点率) | 満点 |
---|---|---|
1級 | 602(約71%) | 850 |
準1級 | 512(約68%) | 750 |
2級 | 460(約70%) | 650 |
準2級 | 406(約67%) | 600 |
3級 | 353(約64%) | 550 |
英検ホームページ公開のデータです。
1次試験、2次試験どちらも、級が上級になるほど合格基準の得点率が高い傾向があります。
問題が一番難しい1級が一番高い得点率が求められるのですね。
TOEIC®と比較
英検と同じく日本で認知度の高い英語資格試験TOEIC®(TOEIC® L&R)と比べるとどうでしょう?
問題形式や内容が異なるので正確に比較することはできませんが、合格者の声では、断然英検1級の方が難しかったという声もあります。
TOEIC®は、ビジネス英語に特化する傾向にあり、純粋な英語力があれば高得点が取れますが、英検1級は4技能全てが高くないと合格できません。
英検1級の対策をしていればTOEIC®に対応する実力も必然的に伴ってくるね。
TOEIC® L&Rのテストはリスニングとリーディングに特化した試験で、別にスピーキング、ライティングの試験(TOEIC® S&W)がありますが、英検1級は1つの試験で4技能全ての能力を測られます。
英検1級合格者は、『洗練された知識と教養、純粋な英語力だけではない幅広い背景知識が必要とされる素晴らしい試験』とも言っています。
大学上級程度ってどれくらい?
英検ホームページでは、1級は大学上級程度と記されています。
級 | 程度 | 習得目標 |
---|---|---|
5級 | 中学初級程度 | 使える英語の登竜門 |
4級 | 中学中級程度 | 基礎力定着 |
3級 | 中学卒業程度 | 高校入試レベル |
準2級 | 高校中級程度 | 使える英語で世界へ |
2級 | 高校卒業程度 | 大学入試レベル |
準1級 | 大学中級程度 | リーダー(品格)の英語 |
1級 | 大学上級程度 | リーダー(品格)の英語 |
<程度>
広く社会生活で求められる英語を十分理解し、また使用することができる。
<審査領域>
- 読む:社会性の高い幅広い分野の文章を理解することができる。
- 聞く:社会性の高い幅広い内容を理解することができる。
- 話す:社会性の高い幅広い話題についてやりとりすることができる。
- 書く:社会性の高い幅広い話題についてまとまりのある文章を書くことができる。
単語、長文、英作文、リスニング、面接の5つの技能それぞれの難易度を見ていきましょう。
単語 10,000~15,000語のマニアックな単語が必要
単語・語彙は筆記試験1番目のパートで25問出題されます。
級 | 語彙数 |
---|---|
1級 | 10,000~15,000 |
準1級 | 7,500~9,000 |
2級 | 3,800〜5,100 |
準2級 | 2,600〜3,600 |
3級 | 1,250〜2,100 |
4級 | 600〜1,300 |
5級 | 300〜600 |
英検1級の単語は、ネイティブでも普段使用しないものや、ネイティブでも見たことがないようなマニアックな単語が出てくることで知られています。
ネイティブの所持語彙が15,000語くらいと言われているので、英検1級ではネイティブレベルの語彙力が必要です。
英字新聞、英語雑誌、外国ニュースで出てくるような専門的な超難解な単語が出てきます。
長文読解 350~800字前後の長文問題が6題
長文読解は、筆記試験2&3番目パートです。
- 2つ目のパート…350文字前後の長文2つ、各3問ずつ選択問題
- 3つ目のパート…500~800文字の長文3つ、各3,3,4問ずつ選択問題
長文の量の多さに圧倒されます。
これだけの量の英文を制限時間内に全て読んで解けるのがすごい!
そして、社会性の高い難しい内容の長文を読んで選択肢の中から選択する設問の1つ1つも長いのです。
相当の速読&読解力が必要ですね。
ライティング(英作文) 難題トピックについて英作
筆記試験4番目のパートです。
地球温暖化、世界の飢餓、出生率、移民、再生可能エネルギー、生物多様性、経済発展、国際協力などの多様な時事問題のトピックが問われます。
日本語でも自分の意見を表現するのが難しい内容を英作……。
筆記試験100分間に、1~3番目の問題との時間配分も配慮した上で英作しなくてはなりません。
即興で考えをまとめ、英文にする能力が求められます。
日頃から世界情勢や時事問題にアンテナを張って、論理的に英語で説明、表現できるよう訓練しておくことが大切だね。
2016年度より採点基準がリーディング、ライティング、リスニングのトータルの正解数で合否判定するのでなく、3技能それぞれ850点ずつの配分で採点されることになったため、例えばリーディングとリスニングが満点でも、ライティングが0点や点数が低かったら不合格になってしまいます。
200~250文字の英作文も大きな比重を占めます。
リスニング 速いスピード音声が1度しか流れない
読まれるスピードは、ネイティブ並みのナチュラルスピードで、会話も質問も1回ずつしか放送されません。(リスニングは準2級以上~1回ずつの放送。)
使われる単語も難易度が高いです。
問題が4部に分かれており、製品の欠陥、オフィスの移転、業務上のトラブル、雇用契約などのビジネスに関するもの、キャンパスでの喫煙ポリシー、最近読んだ本、銀行に口座の閉鎖を相談する電話、選挙などの日常生活に関するもの、環境問題、社会問題、経済、科学、生態など日本語でも難しい複雑な内容の英文が、各設問それぞれ80~200文字前後が放送されます。
解答時間は10秒という短さです。
10秒の間に4択の中から選択しなくてはなりません。
10秒間という短時間に放送を聞きながら4択の選択を読み、解答します。
面接(2次試験) 高度な内容のトピックについて1分で考え2分でスピーチ
準1級以下の面接は試験官が1人ですが、1級のみ2人います。
試験内容は次の4つの項目で評価されます。
- スピーチ
- 質疑応答
- 文法&語彙
- 発音
それぞれ5点ずつ、2人の試験官の合計が40点満点です。
与えられたトピックに関して、1分間考える時間が与えられ、2分間スピーチをします。
想定されるトピックは、政治、国際関係、少子高齢化、地球環境、女性の社会進出など1次試験と同じく、日本語でも答えることが難しい内容です。
質疑応答では、試験官からの質問に対して即興で答えなくてはなりません。
自分の考えを頭の中で整理して、論理的に矛盾がないように伝える能力が必要とされます。
内容だけでなく、発音や文法の間違いも評価されます。
1次試験に合格しても、2次試験で何回も不合格になった人もいます。
英検1級の2次試験の合格率は、2007~2011年のデータが50~60%。
準1級の2次試験の合格率84~87%と比べたら、ぐんと下がっています。
準1級は1次試験に合格すれば、2次試験はさほど難しくないイメージだけど、1級は全然違うね。
2次試験の合格率が60%で、2次試験ってそんなに難しくないのかな…と錯覚してしまいますが、そもそも1次試験を突破できるのが10%ちょっとであることを考えると、難解な1次試験を突破した異色の人だからこその合格率ですね。
英検1級のすごさを生かせること
英検1級を持っていると、英語関係の仕事において武器になる他、以下の場面で有利になります。
- 高校、大学での入試優遇や単位認定、優遇制度
- 海外留学などで英語力が評価される
- 奨学金・給付金・入学金等にも活用
- 教員採用試験における英語関係のテストでの免除or加点(自治体により対応は異なる)
- 英語教員、英語講師にとって大きな武器になる
- 通訳案内士(ガイド)試験の外国語(英語)の筆記試験が免除される
- 通訳、翻訳、外交官、英語教師、国際ビジネス企業などの英語の専門職に有利
- 公務員試験での加算
- 履歴書で英語力の高さをアピールできる
- 国連英検特A級、TOEFL高スコア、IELTS高スコア、TOEIC満点等、他の英語試験に挑戦してみよう!というモチベーションが高まってくる
さすが、英検1級のすごさを生かせることはたくさんあるね。
まとめ:英検1級はすごい!
様々な角度から、英検1級のすごさを見てきました。
合格率が低く価値が高い資格であること、様々なシチュエーションで大きな武器になることが改めてわかった気がします。
英検1級合格者は「並大抵でない努力をして英語資格の頂点を手に入れた!」というやり遂げた達成感と自信を得て、英語以外のことにも自信を持って挑戦しているように思えます。
正しい勉強法を継続すれば英検1級は合格できると言う合格者もいますが、どんなに努力し挑戦しても合格できない人がいるのも事実です。
やっぱり、英検1級はすごい!
と改めて、ただただ脱帽です。